金属床義歯とは?
歯を失った際の治療法の一つとして、検討されるのが「義歯(入れ歯)」です。歯の欠損本数やお口の状態、年齢、全身状態などに応じてさまざまな治療法がありますが、その中でも幅広い症例に対応できるのが義歯です。

一般的に保険診療で用いられるのがレジン(プラスチック)床義歯ですが、これに対して金属(主にコバルトクロム合金やチタンなど)を用いたものが金属床義歯です。
金属床義歯は自由診療となるものの、機能性や快適性に優れており、「より質の高い入れ歯」を希望される方におすすめできます。
ここでは、そんな金属床義歯の主な特徴について詳しくご紹介します。
金属床義歯の主なメリット
1.薄く作れることによる違和感の軽減
金属はレジンに比べて強度が高いため、同じ強さを保ちながら薄く作ることが可能です。特に上顎の総義歯の場合、口蓋(上顎の天井部分)を覆う床が薄くなることで、装着時の違和感が大きく軽減されます。
レジン床義歯では、強度を保つためにある程度の厚みが必要になります。そのため「口の中がいっぱいになる感じがする」「話しづらい」といった不快感を訴える方も少なくありません。
一方、金属床義歯では口蓋部を薄く仕上げることができるため、
なります。その結果、発音のしにくさの改善にもつながります。発音が明瞭になりやすく、日常会話におけるストレスの軽減が期待できます。違和感が少ないことは、装着時間の延長や使用の継続にもつながり、結果として咀嚼機能の維持・向上にも役立ちます。

金属床とレジン床の比較(左:金属床 右:レジン床)
2.食べ物の温度を感じやすい
金属はレジンに比べて熱伝導性に優れているため、食べ物や飲み物の温度が伝わりやすいいう特徴があります。
レジンは熱が伝わりにくいため、温かい料理や冷たい飲み物を口にしても温度を感じにくいことがあります。その結果、「何を食べても味がぼやける」「食事の楽しみが減った」と感じる方もいます。
一方、金属床義歯では食事の温度が自然に口腔粘膜へ伝わるため、温かい料理は温かく、冷たい飲み物は冷たく感じることができます。これは味覚の向上にもつながり、食事の満足度を高める重要な要素です。
食べる楽しみは生活の質(QOL)に直結します。温度を感じられることは、一見小さな違いのようでいて、日々の生活に大きな影響を与えるポイントです。
3.耐久性が高く、長持ちしやすい
金属はレジンに比べて強度が高く、たわみにくい構造をしています。そのため、ひび割れや破損のリスクが低くなり、長期間安定して使用していただけます。
レジン床義歯は長年の使用により、噛む力によって徐々にたわみが生じることがあります。このわずかな変形が繰り返されることで、ひび割れや破折や、適合不良の原因となる場合があります。
一方、金属床義歯は剛性が高いため、咀嚼時の力を効率よく分散し、義歯全体の安定性を保ちやすくなります。その結果、支えている歯や歯肉への負担も軽減されやすく、口腔内の健康維持にもつながります。
また、長期的に見ると修理や再製作の頻度が少なくなる可能性があり、結果的にコストパフォーマンスの面でもメリットを感じられることがあります。
4.適合精度が高く、安定しやすい
金属床義歯は鋳造工程を経て精密に製作されるため、歯肉への適合精度が高くなります。また、精密な型取りと技工操作により、患者さま一人ひとりのお口に合わせた設計が可能です。
適合が良い義歯は、装着時のガタつきの減少、噛む際の安定感が向上します。そのため、硬いものでも比較的安心して噛むことができ、食事の幅が広がります。
さらに、適合精度が高いことで、義歯と粘膜の間に食べ物が入り込みにくくなり、痛みや炎症のリスクを抑えることにもつながります。
「外れやすい」「噛むと痛い」といった悩みを抱えている方にとって、適合性の高さは大きな魅力です。
5.清潔に保ちやすい
金属はレジンと比べて表面が滑沢に仕上がるため、汚れが付着しにくいという特徴があります。細菌やプラークの付着が抑えられやすく、清掃性にも優れています。
レジンは吸水性があり、長期間使用すると変色やにおいの原因となることがあります。
一方、金属床は吸水性がほとんどなく、においがつきにくいのが特長です。
そのため、口腔内を清潔に保ちやすく、歯周病予防や口臭予防にもつながります。もちろん、毎日のブラッシングや義歯専用洗浄剤によるケアは必要ですが、素材そのものの特性が衛生面での安心感を高めてくれます。
高齢の方や全身疾患をお持ちの方にとって、口腔内の清潔維持は全身の健康とも深く関わる重要なポイントです。
6.残っている歯を守ることができる
部分入れ歯の場合、残存歯(残っている歯)にかかる負担をいかにコントロールするかが重要です。金属床義歯は設計の自由度が高く、力のかかり方を細かく調整することができます。
適切に設計された金属床義歯は、支えとなる歯への負担を分散し、長期的に残存歯を守ることにつながります。歯を失う原因の多くは歯周病やむし歯ですが、義歯の設計不良による過度な負担もリスクの一つです。
「今ある歯をできるだけ長く残したい」という方にとって、精密な設計が可能な金属床義歯は有力な選択肢になります。
7.金属アレルギーへの配慮(素材選択が可能)
金属床義歯に使用される素材にはいくつか種類があります。代表的なコバルトクロム合金のほか、軽量で生体親和性の高いチタンなども選択肢となります。金属アレルギーが心配な方は、事前に歯科医師と相談することで、より安全性の高い素材を選択することが可能です。
最後に
金属床義歯は、薄く快適で、温度を感じやすく、耐久性や適合精度に優れた入れ歯です。日々の食事や会話をより自然に、より快適に行えることは、生活の質の向上につながります。入れ歯は毎日使うものだからこそ、わずかな違いが大きな満足度の差につながります。
現在の入れ歯に不満がある方や、「もっと快適な入れ歯にしたい」とお考えの方、これから義歯治療を検討されている方は、ぜひ一度ご相談ください。お一人おひとりのお口の状態やご希望に合わせて、丁寧なカウンセリングを通じて、最適な治療方法をご提案いたします。
また、当院の自由診療では、金属を使用しない特殊な樹脂で作られたノンクラスプデンチャーも対応しております。
ノンクラスプデンチャーとは?
ノンクラスプデンチャーとは、金属の「クラスプ(バネ)」を使用しない部分入れ歯のことです。従来の部分入れ歯では、残っている歯に金属のバネをかけて固定しますが、そのバネが目立ってしまうことが見た目のデメリットとされてきました。
ノンクラスプデンチャーは、歯ぐきに近い色の特殊な樹脂素材を用いて作られており、バネの代わりに弾力性のある歯肉色の部分で歯にやさしくフィットさせて支えます。そのため、装着しても入れ歯だと気づかれにくく、審美性に優れているのが大きな特長です。注意点として、すべての症例に適しているわけではありません。素材の特性上、強い力がかかる奥歯の広範囲欠損では適応が限られることがあります。また、経年劣化による変色や、修理が難しい場合がある点も理解しておく必要があります。
ぜひお気軽にご相談ください。
